必要最小限でコンパクトな描写
■小説の描写は心理的なものも含めて、登場人物のアクションが主体に なっています。 ところが、この描写が本当に効果的か、読者に伝わっているかというと よくわからないことが多いですね。
そこで、アクションの伝達がよくなるためには、どうしたらいいかを 少し考えてみます。
まず、必要なことは、そのアクションが本当にその場面にふさわしいか、 チェックすることです。 ただし、主人公のエピソードだから、という視点で考えると、ほとんどの アクションは正しいものに見えてしまいます。 それを判断するには、そのエピソードの効果性を考える必要があります。
でも、この方法はちょっと面倒かもしれません。 とくに、直感的にエピソードが出てきて、それを並べている人にとっては 遠回りをしているように見えるでしょう。
ここでは、必要なアクションがうまく読者に伝わるようにすればいいのです から、伝達率に絞って考えることにします。 前回までの話では、読者の想像力が重要で、それを考慮すれば描写もかなり コンパクトにできるということでした。
実際に試してみた人はいるでしょうか?
読者の想像力を前提にすることで、必要な描写と不要な描写の区別がついたら、 今度は、それを満たす文章を書けばよいのです。
これは、アクションの場合でも同じです。 その人物になったつもりで、必要最小限の動きをとらえてください。 それをコンパクトにまとめて、文章にします。 読者にとって、それは想像力を発動する「きっかけ」になります。
この方法が、一番わかりやすくて確実です。 文学的な表現に欠けるような気がするかもしれませんが、 ここは「必要最小限」「コンパクト」がキーワードです。
「文学的表現」は、あとで読み返してみると、ただ文章が冗長になっただけ という結果に終わる可能性が高いですね。 「必要最小限」「コンパクト」な描写であれば、冗長になる危険は避けられます。 あとは、「雰囲気」も含めて、読者に伝わる文章で書いてあれば、 それで十分です。
それはあなたが考えている「文学的表現」から遠いものかもしれませんが、 いま書いている小説にはぴったり合っている可能性もありますから、少しは 大事にしてあげてください。 しばらく、その文章のリズムを意識していると、そこから独特の文体が 生まれてくるかもしれません。
これは、実際にやってみないとわかりません。 でも、やってみれば、確実にわかります。
最初は、その文体が満足のいかないものでも、しばらく書いているうちに 納得できるようになるでしょう。 その文体をあっさり捨てるよりも、とにかく書いてみて、そこから生まれてくる リズムに慣れるほうが重要です。
リズムに意識を集中することで、それは「文学的表現」にレベルアップする 可能性があります。 一般に思われている「文学的表現」を真似ても、それは表面的なもので 終わってしまいます。 ここでのポイントは、作者がそのリズムを発見して、小説を書いている間、 それを大事に抱え続けているかどうかです。
表面的な真似だけでは、大事に抱え続けていることはできません。 だから、いまの段階では「文学的表現」かどうか結論を出してしまうよりも、 そのリズムを大事にしてください。 これが、読者への伝達率をアップする鍵になります。