主人公にオリジナル性をもたせる
■小説を書こうとするとき、たいていは「まず主人公を決めて」 「ストーリーを思いついたところから展開していく」でしょう。
これはもっともスタンダードな方法ですが、 現在のようにストーリーが出尽くしてくると、 既存のストーリー展開に流れてしまうおそれが あります。
主人公自身が、特定の動き方や話し方をしてしまう ことも、珍しくありません。 ですから、オリジナル性を保つためには、この方法をあまり使わない ほうがいいのです。
小説の主役は、もちろん主人公ですが、その重荷を作者が肩代わり することで、少しは動きが軽くなります。 「まず主人公を決めて」「主人公が動くとおりに書く」という方法は すべての重荷を主人公に背負わせ、既存パターンの重力圏から脱出 する余裕を失わせます。
そこで、主人公が動き出す前に、作者が主人公のことをよく理解して、 その基本的な性格と行動のしかたをつかむ必要があります。
かんたんにいえば、
・作者自身が、主人公になりきる
・そのぶんだけ、主人公の方には余裕ができ、意外な側面の発見を含めた
自由な行動、既存パターンから外れた動きができるようになる
というわけです。
これは、主人公に少しでもオリジナル性をもたせるために、 有効な方法だと思います。
ここまで読んできて、作者・主役・オリジナルの3つが密接に関連して 出てきたことに気づいたでしょうか。 実は、小説を書くとき、この3つを切り離すことはできないのです。
作者にとっては、たいへんなことに思えるかもしれませんが、 オリジナル性の高いものを書ける可能性が急激にアップします。 現在、小説を書こうとすると、ストーリー展開や文体を考えるより、 どうやってオリジナル性を出すか、という問題のほうが深刻です。
既存のものに沿っていてもかまわないなら、ストーリー展開や文体に ついては、むしろ楽ができます。 私小説風の作品などは、自動的にできあがってしまうかもしれません。 それは、本来、脱出すべき領域に、自ら飛び込んでいるということです。
作品自体は、ちょっと形が整っていなくても、
・既存パターンからの脱出に成功している
・オリジナル性を保つことに意識的だ
という2つを満たしていることのほうが健康的で、将来性がある
と思います。
小説は、できるだけかんたんに書ければ、それに越したことはない のですが、この点だけは注意したほうがよいですね。 オリジナル性の高いものを書いていないと、だんだん疲弊してきて、 長続きしなくなってしまいます。
精神的に「一貫して」「高いレベルで」「張りつめた状態」を 保つことは、作品づくりに欠かせない要素ですが、最初はかなり 強く意識していないと、すぐに忘れて、安易な方に流れがちです。 こういう要素を満たすためにする工夫は、意義があります。 ぜひ、工夫して、ハイレベルな精神状態をキープしてください。
作品のオリジナル性や主人公の独立性に、大きな影響を与えると 思います。 もちろん、そうやって作品を書き上げることができれば、 作者は深い満足感を味わうことができるでしょう。