主人公の成長プロセス
■小説やマンガをかいていると、登場人物がいろいろと変化します。 それは人物が成長しているからですが、作者にとっては、やっかいな 問題も引き起こします。
当初の設定からはみだした動きをすると、
・そのまま登場人物の「自由」にまかせて動かした方がいいのか
・やはり当初の設定を守って、動きを抑えた方がいいのか
迷いますね。
とくに、ファンタジー系では、キャラクター設定や舞台設定をきちんと
やってから、
「さあ、かこう」
となる傾向が大きいので、設定と違う動きが少しでも出てくると
「どうしよう? まとまりがつかなくなってきた!」
となるわけです。
でも、別にあわてる必要もありません。
実は、当初の設定は、
・作者からみた「キャラクター」
・作者からみた「舞台」
で、肝心の「キャラ」と「舞台」の相性チェックが
できていなかったのです。
きっちりと決めた設定を少しゆるくするだけで、かなり違ってきます。
ガイドラインとしては
・キャラクターは「自由」に動いてもらう
・舞台設定はそのまま使う
となります。
せっかく、舞台設定をしたのだから、それを捨てるのはもったいない
ですよね。
ただ、ある要素を1つプラスする必要があります。
それは……
・作者が、舞台に関して想像力や連想力を活用して、人物の動きを
フォローする
ということです。
このフォローがうまくいけば、当初の設定が使えます。 具体的には、主人公の感性に従って、舞台の雰囲気や道具の使い方を 書き換えるということです。
たとえば、何かのアイテムを探す旅をしている一行が、 砂埃が激しく舞っている道に差しかかったとします。 ふつうのキャラは、ここを素早く通り抜けるでしょう。 でも、主人公は、砂埃の真ん中で座りこんでしまいました。
当初の設定集には
・砂埃の激しい道。
・人通りが少なく、たまに通る旅人は足早に過ぎ去る。
・砂漠から舞ってくるため、砂埃が静まる気配もない。
と書いてあるとします。
そういう場所にわざわざ座りこんだということは、主人公の個性が そこに現れています。 急いで立たせて、歩かせると主人公の個性がつぶされてしまうでしょう。
ここは、主人公の行動を優先するのがいいですね。 そこで、作者の方に、設定集にはない「砂埃」の扱い方を想像する力が 求められるわけです。
さて、どんなふうにすればいいでしょう?
ここで、どれだけ柔軟な発想ができるかで、作品のおもしろさや、充実度が 決まってきます。 設定に引きずられて、発想が萎縮してしまうと、作品のエネルギーが一気に 失われてしまいます。
どんな発想が最も効果的でしょうか?
キーは、やっぱり主人公の成長や変化です。
それを促すような発想が必要です。
道に積もった砂の上に手をついた主人公。
その手が砂の中に沈んでいく。
砂の中で、指が何かにあたった。
取り出してみると、それは巻物だった。
この巻物をどう扱いますか?
探しているアイテムの在処を記した地図でしょうか?
それでもかまいません。
ふつう、こういうことをすると「ご都合主義」といわれます。 でも、それは少し違っています。 道に積もった砂の中から、地図が出てくるのは、あり得ることです。
でも、それが本当に「正しい地図」で、その通りに歩いた一行がアイテムを 手に入れる、というのはあり得るかもしれませんが、ストーリーを組み 立てるうえでは、まずいですね。
その理由は、主人公の「成長・変化」のプロセスがすべて飛ばされているからです。 読者は、一行がアイテムを手に入れるかどうかはどうでもいいのです。 主人公が、成長・変化するプロセスを読み取りたいんです。
だから、こういう地図を見つけたら、それは主人公を「窮地」に追いやる ものでなければなりません。 そうしないと、主人公が「成長・変化」しないからです。
作者は「設定」にとらわれて、主人公の変化を見過ごしてはいけません。 むしろ、どんな平凡な行動の中にも、主人公の変化を「発見」する注意 深さと、想像力が必要です。 これに比べれば、知識などは重要度がぐっとと下がります。 この「発見」を楽しみながらできる人は、エンターテイメント作家に向いて います。
「設定」は自分の頭の中で計算すればできます。 でも、「発見」は計算してもできません。 そういうものに、じっくりとつきあえる作家が減っているのは確かです。
あなたは、自分で考えた「設定」を乗り越えて、主人公の声に耳を傾ける
ことができますか?
その声を、作品に展開することができるでしょうか?
そこには、きっと主人公の「変化・成長」の種がまかれています。