原稿を削ると主人公は身軽になる
■小説を書いていると、最初はうまく進んでいても、 途中で止まってしまうことがあります。
ここをなんとか進めるにはどうしたらいいか?
書くネタに詰まってしまって……
というふうに考えると、ますます進まなくなります。
結論からいえば、ネタがなくなったのではなく、
視野が狭くなっているだけです。
主人公の行動を集中して書いていると、 どんどんのめりこんでいき、他のことが見えなく なります。 つまり、ネタがあっても見えないだけなんです。
それから、話がかなり展開していて、今さらこんなネタは書けない ということから、原稿が進まなくなることもあります。 この場合は、ネタをぼろぼろこぼしながら、描写をどんどん進めて いった、と解釈することもできます。
ということは、本来書こうとしていたネタが、まだたくさん残って いるわけです。
すでに、原稿枚数が100枚を越えているとします。 これを捨てたほうがいい、というのではありません。 この場合、疑問の投げかけ方は、こんなふうになります。
「書いていて、楽しかったですか?
原稿を読むと、その楽しさが伝わってきますか?」
書いているときは「おもしろい」と思っていたのに、 原稿を読み返してみると、それほどでもなかったという場合、 描写が「行動」ではなく、「説明」になっている可能性があります。
主人公の行動を描写し、それを読むことで、読者に感動が伝わる。 そのことがわかっているつもりでも、描写が「説明」になっている ことが多いようです。
ともかく、ここで絶対に避けたいのが、テクニックに頼ることです。 そんなことをしたら、ますます視野が狭くなってしまいます。 主人公について、よく観察すると、必ず「修正箇所」が見えてきます。 そこを直せば、展開自体が変わってきて、先に進むようになります。 話が進まなくなる原因は、主人公の行動がパターン化されてしまった からです。
・想像力を使って、主人公の独自性を発見する。
そのうえで、
・「よくある行動」をとった箇所は、内容にかかわらず削ってしまう。
・周囲にいる人物と主人公の関係性があいまいな箇所も削ってしまう。
・話の展開からずれた、よけいな記述は削ってしまう。
削ってばかりで、ますます原稿が短くなってしまうように見えますが、 これらの記述が、主人公の自由な行動を阻害しています。 重要なのは、主人公の独自な行動です。
その行動をきちんと観察して書いていれば、自然にエピソードが つながっていきます。 主人公の「本質」から離れた、よけいなものが入ると、そこで流れが ストップします。
血液の流れを考えると、わかりやすいかもしれません。 小さな障害物が、勢いのある流れを止めてしまうイメージが はっきりするでしょう。 障害物が多いと、ストーリー全体が機能しなくなります。 まずは、原稿を読み返して、この障害物を取り除くことが重要です。
主人公の設定があらかじめできている場合は、この方法で ストーリーが自然に流れ始めます。 作者であるあなたが、自分の発想力、想像力、連想力を信じて、 それを活用することができるかどうか。 作品の質は、この一点で決まります。
活用できずに、テクニックに頼った場合は、ストーリー内部で
障害物がたまりはじめ、やがてストーリーが機能しなくなります。
・主人公の設定がきちんとできている。
・自分の発想力、想像力、連想力を使いながら、新しい発見を楽しむ。
この2つができていれば、書いているうちに、自然に小説の形に
なっていきます。
はじめのうちは、とくに自分の発想力、想像力、連想力に疑問をもつ ことが多いですが、これは小説を書いていくことで、使い方が身に ついていく類のものです。
最初から使えるわけではありません。 人によっても違います。
ギャグ系の発想はできるけど、シリアスなものは苦手 という場合もあるし、その逆もあります。 ですから、これは書きながら使い方を発見していく、というのが 一番いいスタンスになります。 だんだん上達していくのが実感できれば、小説を書くことも 楽しくなっていきます。
ストーリー作りを楽しむことに加えて、自分のこれらの能力が
上がっていくプロセスを味わえるため、小説書きとしては、
最高の状況だと思います。
いかがでしょうか?
書いていれば、なんとかなるんです。 書かないと、そのまま忘れてしまいます。
書いていれば、次々と新しい発見をすることができます。
いま、小説の構想があるんだけど、なんとなく書く気になれない という方は、とりあえず最初の5行だけ書いてみるといいかも しれません。
その構想が、自分の想像力と結びついたものであるなら、 次の日に、続きの5行を書いてみてください。 たぶん、また次の日も、5行書きたくなります。