主人公と相棒が重なる地点
■小説やマンガをかくときに、最初に決めるのが主人公。 もちろん、主人公は、その作品のすべてを背負っています。 なにしろ、それを突き詰めていくと、文体の話にまでいってしまう くらいです。
でも、主人公のサポート役もけっこう重要なんですよ。
主人公はストーリーに筋を通すと同時に、心理的な揺れや成長を 通して、ある種の豊かさをもたらします。 それによって、ストーリーの「多様な読み方」もできるようになる のですが、一方で、展開が重くなってしまうんですね。
とくに、初心者がストーリーをつくると「悲惨な状況」を主人公に 背負わせてしまうことが多いようです。
たしかに、そういう展開はテレビドラマで見慣れていますから、 作品をつくるときに、自然にやってしまうんですが、これはちょっと まずいですね。
ある主人公を設定します。 もちろん、いろいろな背景をもっていて、そこから発生する悩みや 問題を抱えているわけです。 それは、ストーリーが展開する中で、主人公が成長しながら乗り越えて いくものですから、かまわないんですが………。
初心者は、ここでつい余計なことをやりがちなんですね。
状況をさらに劇的なものにしようとして、悲惨な要素をどんどん 付け加えてしまうんです。
これがまずい。
どうしてかというと、主人公が自分で抱えてしまったのではなく、 作者の都合で「抱えさせている」からです。
一度これをやると、ストーリー展開が作者の都合によって転がり はじめます。
作者自身は夢中で書いていますから、その不自然さに気がつきません。 既存のストーリー展開に乗ってしまうと、すぐにこういう傾向が出て きます。
とはいっても、ストーリーの奥行きを出したいという気持ちもわかります。 そこで、初心者が作品をつくるときに、意外に重要な役割をはたすのが いつも主人公の近くにいる相棒です。
いつもそばにいて、ただ頷いているだけではないんです。
相棒も主人公に出会う前には、自分の人生を生きています。 そちらの要素を加えることで、作品に奥行きが出てきます。
これも、やりすぎると、主人公が入れ替わってしまう危険があり ますが「注意深さ」を鍛える上で、なかなかいい練習になります。
まず、
・主人公を固定しておきます。
こうすることで、本来のストーリーを維持できます。
そして、 ストーリー上で、主人公と相棒が重なる点をチェックしてみます。
惰性で書いていると、この2人はべったりしているように見えるかも
しれませんが、よく観察していると
ある事項について、
・反対の立場にたっている
・心情的に互いに受け入れられない
ことが見つかる可能性があります。
これをテーマにすれば
・主人公と同じくらい、相棒のキャラが立つ
・ストーリーを維持しつつ、奥行きを出せる
・新しい展開の可能性が出てくる
といったメリットがあります。
これは作品上のものですが、作者の方から見ると
・主人公と同じくらい、相棒を自然に動かすことができるようになる
・この方法を、他の人物に応用すると、さらに作品の流れが自然になり、長編に
することができる
・1つの作品を展開することができたので自信がつく
そして、
・ストーリー展開を広い視野からながめる余裕ができる
という「いいこと」が並びます。
単にテクニックに走ってしまうと、こういう「いいこと」が 得られません。
それに、ここで必要なのは文章技術ではないんです。
むしろ、
・主人公や相棒を大切にして、その行動を尊重する
という視点が必要です。
この視点をもてれば、ふつうは見落としてしまうことにも 注意がいくため、オリジナルのエピソードが向こうから入って くるようになります。
できあがった作品の「安定性」「オリジナル性」は自然に高く なりますから、作品を書くこと自体が楽しみになりますね。