「どこかで読んだ話」にならないために
■ところで、ノートとか用意してますか?
読むだけでもかまわないんですが、これから何か作品を
書こうという方は、ノートを用意して気づいたことや、
ひらめいたことをメモしておいたほうがいいですよ。
あとで、絶対、参考になります。
何気ないひらめきは、すぐ忘れてしまいます。 ですから、書きとめておくといいですね。
しばらくして見てみると、宝が埋まっていたりしますから。
これ、たいていの人は、 「そうかなあ?」 「わたしの思いつきなんか、書いてもねー」 「そのままゴミ箱行きだよ」 という反応なんですが………
やってみた人は 「そんなのあたりまえじゃん!」 って顔してますよ。
「アイデアさえ浮かべば、何か書けるのになあ」 という人、ときどきいるんですが、 アイデアが浮かばないんじゃないんですね。 アイデアが浮かんでも、平気で見過ごしているんです。
作品がつくれる人は、アイデアをつかまえる「注意深さ」と 「自分の直感を信頼する強さ」をもっています。
この2つは、今の日本ではなかなか持ちにくいんですね。 もし、作品をかこうとする中で、この2つが身についたら……。 絶対、いいですよ!
ちゃんと作品づくりに取り組むと、自然にこういうところに 行き着くと思います。
小説やマンガなんかかいていると「現実離れする」「現実逃避だ」 というのは過去の誤った認識です。 小説を書いていると精神を病む、というのも昔の私小説の影響です。 だけど、いまそんなことを言われても、たいていの人は意味がわから ないと思います。
むしろ、いまだったら、表紙にアニメ絵のついたキャラクター小説を 思い浮かべるかもしれません。 「あんなのにはまって、まったく、オタクというのは……」 というわけです。 でも、もちろん、キャラクター小説にはまっているからといって、 精神を病んでいるわけでもないし、幼稚なわけでもありません。 これはただの偏見です。
一方、ビジネスマンから見れば、個人の時間を消費するものは、 すべて「近寄らないのが一番」で、小説は司馬遼太郎だけで十分、 ということになります。 もちろん、マンガを読んでいるビジネスマンもいます。 これは、その人に柔軟性があるかどうかということにつながってきます。 この「柔軟性」ひとつ取り上げただけで、ビジネスマンという括りが 意味を失うほど、個人によって違いがでてきます。
どうして、こんなことを書いているかというと、 「現代ほど、人によって認識がバラバラな時代ははじめて」 だからです。
少し前なら、ほとんどの人が興味をもったり、納得したことでも いまでは、そんなパワーをもつことができなくなっています。
そんななかで、特定の主人公をつくり、作品を展開するわけです。
どうしたらいいでしょう? やっぱり、小説やマンガをかくの、やめますか?
たとえば、作品を構想すると 「格闘が得意な少年」 「魔法が使える少女」 「無愛想だけど推理力がすぐれている少年」 「何もないけど、ほんわかした学園生活をおくる少女」 という感じで、いくつかのパターンがでてきます。 そして、舞台になる学校や街で事件に巻き込まれてしまい…… という展開になるわけです。
これを小説やマンガでかくと、たしかにおもしろいものができるん ですが、そこに落とし穴が……。
これらの構想は、いままでに読んだ小説やマンガの延長に出てきます。 まあ、それはかまわないんです。 作品の継続性という要素が入ってきますから、あるマンガを見て、 自分でもそういうのがかきたい、と思うのは自然です。
ここで落とし穴というのは、それとは少しちがいます。
たとえば、小説やマンガで、主人公の行動だけをかくとスピードが 速くなって、テンポのいい作品ができます。 とくに、マンガではこのスピードの維持が必要で、小説だったら ゆっくり説明するような箇所でも、キャラクターの表情をデフォルメ してかいたり、効果線やスクリーントーンを使って、なんとか動きを 出そうとします。
当然、そういう場面に読者は惹きつけられます。
さて、問題ですが、 「この主人公は、どんな心理から、そういう行動をしているの でしょう?」
ただの勢いだけで、その行動をしていると、
○作品が行き詰まります
○読者が「どこかで読んだ話だな」と退屈しはじめます
作者は、主人公の心理をとらえていなければなりません。
これが落とし穴です。
小説やマンガの人物をベースにすると、この心理をとらえるところまで なかなか考えが及びません。 たしかに、ストーリーは進展しますが、それは既存のキャラクターの 勢いを借りているからです。
オリジナルの作品をかいているつもりでも、本質的には、あるマンガを ベースにして二次創作しているのと変わりません。
ゼロから考えようというのではないんです。
あるマンガをベースにするのはかまいませんから、 それをいったんおいといて、
○キャラクターの心理を自分で考えてみる
○それから、キャラクターの声を聞いてみる
この2つができると、オリジナル作品につながります。
逆に、この2つを無視していると、 どんなに工夫しても「どこかで読んだ話」になってしまいます。
主人公を設定するとき、どんな方向で考えればいいか、 少しイメージがわいてきたでしょうか?
なにか思い浮かんだら、すぐにメモしておいてください。 そのメモは、必ず役に立ちます。
それから、「どこかで読んだ話」になる作品をかいていると 小説の場合は300枚くらいで、作者自身がだんだん飽きてきます。 そのため、長編になったり、連載になったりする可能性が消えて しまいます。
でも、マンガの場合はちがうんですね。 「どこかで読んだ話」でも、けっこう楽しく作画してます。 これは絵が上達するからですね。 描けば描くほど絵がうまくなって、そちらのほうに関心が移って います。 Photoshopでカラー原稿なんか描きはじめると、もうすっかり イラスト上達への道に入りこんでしまいます。
これを読者からみると、 「ストーリーはありきたりだけど、絵がうまいから、買いだね」 ということになります。 もちろん、イラストがうまくなるのはいいんですが、ストーリーの ほうにも注意を払わないと、やがてマンガ家とイラストレーターの 分岐点にさしかかり、知らない間にマンガ家の道を見失ってしまう ことになります。 絵がうまいのに、いつのまにか消えてしまったマンガ家はたくさん います。
オリジナルの作品を描きたかったら、マンガ家のほうが自由度が高い ので、この分岐点は要注意ですね。